新穂山

新穂山について
                              平成24年8月15日起稿

岐阜県揖斐川町坂内坂本にある三等三角点大ヶ屋1066.9mを「新穂山」とする記録をWEBで見た時、非常に強い違和感を持った。新穂谷・新穂峠から遠過ぎるのではないか。では、新穂峠北600mの四等三角点新穂1039.8mはと見ると「新穂谷山」となっていた。

あれから数年、多治見図書館で『坂内村誌・通史編』(平成16年8月3日発行、坂内村誌編集委員会編集)を見た。「新穂山」に関する記載は13ページもあり、正確に要約することは不可能なので、読み解けた個所のみを以下に記載する。(以下栗色文字は引用)

坂内に「新穂山」を固有名詞とする山座はない。「新穂山」は新穂谷の流域また坂内村字新穂地内の山域である。
淡海国木間攫(おうみのくにこまぞろえ)』には甲頭原村の奥、姉川源流の一つをなす美濃国境の高嶺が「新穂ヶ嶽」とし、この付近にモロカ越えがあるとしている。
(追記2020/9/12:「モロカ越え」とあるのは当然「諸家越え」で、新穂峠の位置と推定できる。)

『近江湖北の山(昭和60年)』や『滋賀県の地名(平成3年)』も三角点大ヶ屋を「新穂山」としているが、
坂内びとにとっては完全な誤りとなる。
(私の感じた違和感を明快に肯定している。殿又谷の源頭部が「新穂山」ということはありえない。)

では三角点大ヶ屋の山名を探すと「大野池田両郡地図」の濃江国境には「・・・大樽火・土蔵岳・日ノ裏峠・金糞山・鳥越峠・大萱山・新穂峠・・・」と注記してある。

「点の記」によれば三角点大ヶ屋の所在地籍は坂内村大字広瀬字大ガヤとあり、鳥越峠・新穂峠間にある山名の「大萱山」とするのに異存はなかろうと思う。

(点の記で確認すると三等三角点大ヶ屋の所在地は大字坂本奥殿又770番地だ。しかし、点名の大ヶ屋と山名の大萱とは同じ音になることに間違いはない。)
(追記2020/9/12:明治38年の点の記には「大字広瀬字大ガヤ」となっていた。)

新穂山というのならば、やはり坂内村大字坂本・諸家区内字新穂地内、新穂谷流域の山岳でなければならない。山旅人の便宜をかんがえると、昭和57年地籍調査に際し設定された四等三角点〈新穂〉標高1039.9mを頂峰とする山座を新穂山として、注記するのが適当であろう。

以上、内容はほぼ原文のまま。また、三等三角点瀬戸山1039.9mは坂内村諸家では長尾と呼ばれているとある。

登った山に山名が無いと困る事は分かるが、意味を成さない私称・誤称が流布することはその土地を生活の場としてきた人々に失礼である。また、歩く者にとっても不幸なことだ。山岳書に私称・誤称が記載されそれが広まった例には事欠かない。

明らかに現地現称にそぐわない私称・誤称は淘汰されるべきだ。

新穂山の地図



美濃一人山の事など新穂山について